≪再生不良性貧血≫
骨髄の働きが衰えて起こる貧血
血液細胞が減少する難病
再生不良性貧血とは?
血液の血球成分をつくるのは骨髄ですが、再生不良性貧血は、その骨髄中の造血幹細胞が障害されて、血球成分が十分につくれなくなるために起こる貧血です。
骨髄では、赤血球のほかに白血球や血小板などもつくられていますので、再生不良性貧血になると、これらの血球も不足します。
多くの場合、原因は不明で確実な治療法もないため、厚生労働省の難病指定を受けていて、治療費が補助されます。
2018年には、ガイドラインにあたる『再生不良性貧血診療の参照ガイド』(難治性疾患克服研究事業)が改訂、重症度や標準的治療法が変更されています。
赤血球、白血球、血小板のすべての産生が低下
再生不良性貧血は、骨髄で血液をつくる造血細胞が減少してしまい、赤血球、白血球、血小板のすべての血液細胞の産生が低下するために、血液の中の赤血球、白血球、血小板の数が少なくなってしまいます。
骨髄では造血細胞が減少する代わりに、脂肪組織が増えてしまいます。
再生不良性貧血では、すべての血液細胞が減少してしまいます。
そのため、赤血球減少によって貧血が出現する以外に、白血球減少によって感染症にかかりやすくなったり、血小板減少によって出血しやすくなります。
再生不良性貧血の症状とは?
赤血球減少
[wp-svg-icons icon=”play-3″ wrap=”span”]貧血の一般的な症状
白血球減少
[wp-svg-icons icon=”play-3″ wrap=”span”]感染症にかかりやすくなる
血小板減少
[wp-svg-icons icon=”play-3″ wrap=”span”]出血しやすくなる
≪再生不良性貧血の症状の例≫
貧血による症状が主な自覚症状になります。
貧血が強くなると、動悸、息切れ、めまい、頭痛などの貧血の症状が現れます。
白血球が減って抵抗力がなくなるので、発熱やのどの痛みなど、かぜのような症状も出てきます。
血小板が減ると血液が固まりにくく、出血が止まらなくなったり、打撲による内出血が起こりやすくなり、あざができやすくなります。
ぶつけた覚えがないのに手足に青あざができたり、歯を磨くと歯茎から出血しやすくなったりします。
再生不良性貧血の重症度
再生不良性貧血は、比較的軽症で症状がほとんどないものから、重症で輸血を必要とするものまで、重症度はさまざまあります。
再生不良性貧血は、血液検査の結果から、軽度、中等度、重症に分けられます。
【stage1】軽度
血球減少が比較的軽度で輸血を必要としない軽症
【stage2】中等度
以下の2項目以上を満たす場合。
・網赤血球 60,000/μl 未満
・好中球 1,000/μl 未満
・血小板 50,000/μl 未満
※≪stage2a≫と≪stage2b≫があります。
≪stage2a≫
赤血球輸血を必要としない。
≪stage2b≫
赤血球輸血を必要とするが、その頻度は毎月 2 単位未満。
【stage3】やや重症
以下の2項目以上を満たし、毎月 2 単位以上の赤血球輸血を必要とする
・網赤血球 60,000/μl 未満
・好中球 1,000/μl 未満
・血小板 50,000/μl 未満
【stage 4】重 症
以下の2項目以上を満たす
・網赤血球 40,000/μl 未満
・好中球 500/μl 未満
・血小板 20,000/μl 未満
【stage 5】最重症
好中球 200/μl 未満に加えて、以下の1項目以上を満たす
・網赤血球 20,000/μl 未満
・血小板 20,000/μl 未満
もしかしたら?と疑う症状
貧血はゆっくり進行すると自覚症状として現れにくいこともあります。
血小板減少による青あざなどで気がつくこともあります。
また、鼻出血もよくみられます。
女性では月経による出血が止まらなくなったりすることもあります。
≪再生不良性貧血の原因≫
先天性と後天性の場合があります。
≪先天性の場合≫
ファンコニ貧血と呼ばれる特殊なものがあります。
≪後天性の場合≫
大多数は後天性のもので遺伝によるものではありません。
原因不明なものが多くありますが、特殊なものとして、薬が原因になっているもの、肝炎に続発するもの、妊娠に伴うものなどがあります。
≪薬が原因≫
薬が原因になっているものでは、抗生物質のクロラムフェニコール(クロロマイセチン)、経口糖尿病薬、抗てんかん薬、鎮痛解熱薬などの使用の後に発症する例のあることが知られています。
そのほかベンゼンなどの有機溶剤を長期期間取り扱った人に発症することがあります。
≪肝炎が原因≫
また、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎にかかって、急性期を過ぎて回復したところに再生不良性貧血になる場合があります。
≪妊娠が原因≫
妊娠に伴う再生不良性貧血はまれですが、原因不明の再生不良性貧血の女性が妊娠すると、病気は一般に悪くなることが多いといわれています。
≪突発性≫免疫の異常が原因
もっとも多い原因不明のものは突発性と呼ばれますが、免疫の異常が関係していると考えられています。
いろいろな研究結果から、骨髄の中のリンパ球に異常が生じて造血幹細胞を傷害することが、再生不良性貧血という病気の本態であると考えられるようになりました。
リンパ球による免疫の異常を抑える免疫抑制療法を実施すると、効果が見られることも、再生不良性貧血に免疫の異常が関係していることを示しています。
突発のものばかりでなく、薬剤性あるいは肝炎後の再生不良性貧血にも免疫抑制療法が有効なので、再生不良性貧血では、先天性のものを除くと、ほとんどの病型が免疫によるものだと考えらえるようになっています。
貧血については下の記事もごらんください。
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