こんにちは、みみです。
今日もブログをご覧いただきありがとうございます。
今回はヒ素と美白効果について紹介したと思います。
美白化粧水トファナ水(ヒ素入りの化粧水)
ヒ素とは?
ヒ素と毒
ヒ素は一般的に毒として知られていますが、実は人体にとって微量必須元素でして、体重50kgの人なら約5mgを体内に持っています。
土壌中に広く存在し、私たちは日々食べ物とともに微量のヒ素を摂取しています。
仮に大量に摂取してしまっても、原因がヒ素だとわかれば解毒剤(キレート剤)が効果を発揮するため、命を失うことはないといわれています。
それでも、ヒ素が猛毒であることの変わりはありません。
水銀と違い、ヒ素の場合は有機化合物よりも無機化合物の方が毒性は強く、もっとも強力なのが亜ヒ酸です。
これは白色の粉末状の物質で、大量に摂取すると下痢や嘔吐、腹痛を起こし、ショック症状を起こして急激に衰弱して死に至ります。
亜ヒ酸にはエネルギーの合成にかかわるSH基という酵素と結合しやすい性質があるため、体内に入ると細胞へのエネルギー供給が絶たれてしまいます。
このような細胞毒性のほかに、慢性的な摂取で神経系や血管にも害を与えることがわかっています。
ヒ素の毒性は慢性毒性と急性毒性
ヒ素の毒性は非発がん性と発がん性に分けられます。
非発がん性の慢性毒性
皮膚の色素沈着や角質増加、動脈硬化。
発がん性
経口経由の摂取で皮膚がんの増加など
ヒ素の毒性はこちらの文献が参考になります。
化粧水のトファナ水を利用した毒殺事件
美白化粧水と毒殺事件
ヒ素の毒性は昔から知られていましたが、一方でシミの原因になるメラニン色素の生成を抑える性質ことがあることから、17世紀から18世紀にかけてヨーロッパでは貴婦人向けの化粧水として販売されていました。
このヒ素入り化粧水は「トファナ水」と呼ばれ、貴婦人の中にはこれを毒殺に用いる者もいました。
中でも、ブランヴィリエ公爵夫人は実の父親をはじめ、慈善病院の患者100人以上をヒ素により毒殺したといわれています。
ヒ素が毒殺に使われたのは無味無臭で気づかれないためでした。
日本でヒ素をめぐる事件といえば、1950年代に起きた森永ヒ素ミルク中毒事件や、1998年に起きた和歌山毒物カレー事件が挙げられます。
森永ヒ素ミルク中毒事件は、粉ミルク添加物にヒ素が混入したことにより、乳幼児に多くの中毒者・死者を出した大規模食中毒事件でした。
トファナ水について
17世紀を代表する有名な毒物であり究極の美白化粧水です。
飲むと人が死ぬ化粧水とか、今では考えられませんが、時代は十七世紀、モルヒネも薬局で買えるおおらかな時代です。
トファナ水の成分は亜ヒ酸。
イタリアの火山の近くでは天然ヒ素が産出し、それを炙れば簡単に酸化物になり、それを溶かしたものを化粧水として利用していたようです。
間違いなくガンの原因にもなりますし、皮膚から入り込んだヒ素は体のあちこちを蝕みます。
一時的に白い肌が得られても、その皮膚は、ちょっとした刺激で破れてしまうような脆いものでしょうし、あらゆる病気のリスクも増えるでしょうから、とてもオススメできるものではないです。
17世紀から18世紀にかけてヨーロッパでは貴婦人向けの化粧水として販売されていたのは、ちょっと驚きですね!
おまけ(ヒ素の分析コラム)
ヒ素の分析方法
ヒ素の測定には、ICP-MSという分析装置を使います。
ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)
プラズマ (ICP) をイオン源として使用して、発生したイオンを質量分析部 (MS) で検出します。
分析ガスは、アルゴンガス(Ar)とヘリウム(He)ガスが主に使用されます。
周期表上のほとんどすべての元素を同時に測定可能であり、低濃度まで検出できます。
有名なICP-MSメーカー
・サーモフィッシャー(Thermo Fisher Scientific)
・アジレント・テクノロジー(Agilent)
装置は汚れ対策が重要
最近の装置は汚れた試料(高濃度試料)対策にも重点を置いています。
・測定中に感度変化(低下)が起きて、正確な定量ができない
・測定する度にメンテナンスが必要
などの従来の問題点を改善。
ヒ素測定上の注意点
ヒ素だけに限ったことではないですが、ICP-MSでは、誤った結果が出ることがあります。
ICP-MSは質量数だけしかモニターできない
ICP-MSは質量数だけしかモニターできない装置です。
ヒ素(As)の質量数は『75』です。
ICP-MSには、アルゴンガス(Ar)を使用します。
アルゴンガス(Ar)の質量数は『40』です。
環境試料など測定する試料などには、一般的に塩化物イオン(Cl)が含まれています。
塩化物イオン(Cl)の質量数は『35』です。
このAr(40)とCl(35)が反応して、ArCl(75)という分子イオンができてしまいます。
すると、質量分析部 (MS)では、『75』というイオンが入ってきたというシグナルを検出します。
この75こそ、As(75)と一致するので、試料中にヒ素が入っていなくても、ICP-MSでの測定結果には、Asが入っていたという結果が出てくるのです。
【対策方法】
ここで、一般的にはHeガスを装置に導入する方法が取られます。
Heを導入すると、ArCl(75)に衝突して、もとのArとClに分離させます。
ただし、あまりにもClの含有量が多い場合は、大量のHeガスの導入量が分離に必要になります。
でも、Heをたくさん導入すると、今度は目的物質の感度が低下してしまうため、低い濃度の測定ができなくなってしまいます。
分析条件を決める際には、①Heの導入量と②ヒ素の定量下限値が十分に取れるように設定することが重要になります。
また、どうしても難しい場合は、測定試料を希釈することで、問題を解決できる場合もあります。
ただ、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社のiCAPシリーズでは、低マスカットオフ機能というものが備わっていて、干渉イオン構成の要因となるイオンを排除、バックグラウンドノイズ低減にも高い効果が得られるようになっているみたいです。
読んでいただきありがとうございました。
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